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IELTSは、英語圏への留学や移住を希望する人の英語力を測定するための英語4技能試験です。その質の高さから、近年は日本の大学入試でもIELTSを活用できるケースが増えており、高校の英語教員の方から「IELTSの指導方法を学びたい」というお声を多くいただきます。

そこで本記事では、IELTSのベテラン講師である小玉先生に「効果的なIELTSの指導方法」を解説していただきました。英語教師の方、IELTS対策の指導者の方は必見です!

※本記事は2022年6月4日のオンラインセミナーを元に作成しました。

講師のご紹介

小玉 英央 先生(LINGO L.L.C. /IELTS主任講師)

LINGO L.L.C.は、IELTSやTOEFLなどの留学試験対策専門校です。小玉先生は中学・高校で英語教師として勤務された後、LINGO L.L.C.に入社し、以来IELTSやTOEFLの授業を9年以上担当されています。

Mr Kodama - Japan

IELTSとTOEFL iBTの違い

最近は中学生・高校生から、以下のようなお問い合わせをいただきます。

「英検準1級までは取ったのですが、次のステップとして英検1級を目指すより、IELTSやTOEFLを受験したほうがよいでしょうか?」

そこで、まずはIELTSとTOEFLの違いについてお伝えします。両試験で求められている能力を比較して、どちらの試験が向いているか、またどちらの問題形式の方が解きやすいか、を基準に選んでいただくとよいと思います。

IELTSで求められる能力

TOEFL iBTで求められる能力

全体

高いリーディング力と会話力

高いリスニング力 4択問題を解く力

リーディング

1文ずつ正確に意味を理解する力

高い語彙力 全体の流れを追う力

リスニング

1単語ずつ聞き取り、意味を理解する力

全体の流れで内容を把握する力

ライティング

正確な文法力

身近な具体例をわかりやすく書く力

スピーキング

さまざまな話題について話す一般的な英会話力

話すべきことを簡単な英語で伝える力

上記に加えて、IELTSはペーパー版かコンピューター版かを選ぶことができます。TOEFL iBTはコンピューター受験のみなので、ある程度タイピングができないと厳しいです。

IELTSペーパー版とコンピューター版に関する詳細はこちら

IELTSとTOEFLのスコアはともに、留学や国内外の大学受験に活用することができます。どちらの試験でも要件を満たせる場合は、スコアを比較して取りやすいほうを選んでください。たとえばIELTSのオーバーオールスコア7.0とTOEFL iBT 100では、一般的には前者のほうが取りやすいです。

IELTSのペーパー版とコンピューター版、いずれで受験した場合も同じ形式の成績証明書がもらえます。IELTSのスコアが必要となった際、「コンピューター版のスコアも認められるかな?」と心配する必要はありません。

IELTSの種類

「アカデミック」と「ジェネラル・トレーニング」モジュール

IELTSには、大学・大学院への進学を目指す人用の「アカデミック・モジュール」と、英語圏への就職・移住を希望する人用の「ジェネラル・トレーニング・モジュール」の2種類があります。

ほとんどの高校生は進学に向けて「アカデミック・モジュール」を受験するはずです。モジュールを間違えて申し込んでしまう生徒もたまにいるので、お申し込みの際は気を付けるようにお伝えください。

IELTS for UKVI

イギリスのビザを取る際、通常の IELTS とは異なる”IELTS for UKVI”が必要になる場合があります。イギリス留学を視野に入れている方はご注意ください。

IELTSの試験の種類に関する詳細はこちら

コストを抑えてIELTS対策をする5つの方法

「目標スコア取得のためならIELTSの受験回数は問わない」という方は、目標スコアを目指して何度も受験していただくのがよいかと思います。とくに初受験は早めに体験して、感触をつかんでから勉強に着手するほうが対策しやすいです。

とはいえ、IELTSは決して安くはない試験ですので、「なるべく受験回数を少なくしたい」という要望があるかと思います。そこで、ここからはなるべくコストをかけずにIELTS対策をする5つの方法をご紹介します。

1, 公式模擬試験を活用する

IELTSには、本番の5分の1の値段で受けられるオンライン公式模擬試験“IELTS Progress Check”があります。「今の自分の実力を試したいけど、まだ目標スコアを取る自信がない」という方には、模擬試験がおすすめです。初めてIELTSを受ける方にとっても試しやすいかと思います。

団体割引制度もあります。詳しくはこちら

2, 無料オンラインセミナーに参加する

IDPではIELTS対策の無料オンラインセミナーを定期的に開催しています。「ライティング対策セミナー」など、特定の技能をテーマにアドバイスをもらえる回もあるので、ぜひ活用してみてください。

オンラインセミナーの最新情報はこちら

3, 塾などの無料体験レッスンを活用する

LINGO L.L.C.の無料体験レッスンでは、IELTSリスニング問題の解説に加えて、一般的な英語学習のアドバイスもしております。結果的に入学されなくても、1時間の体験レッスンで何かしらプラスになる情報をお伝えしているので、お気軽にお試しください。

LINGO L.L.C.の無料体験レッスンはこちらから

コロナ禍の今、さまざまな塾や学校がオンライン体験を実施しているので、いろいろな学校の体験レッスンを受けてみるのも1つの手です。「実際に塾や学校へ行くと入学の勧誘をされそうで怖い」という方も、オンラインは嫌になったらパチッと切っちゃえばいいので(笑)、ハードルは低いと思います。

4, 問題集や参考書で実力を上げる

公式の問題集で演習をして、目標スコアを取れる実力が十分についてから本試験を受けるようにすれば、受験回数を少なくできます。

初心者の場合は日本語の解説がついている参考書がおすすめです。

\日本語解説付き!完全模試2回分収録/

「IDP Education IELTS 公認問題集」詳しくはこちら

問題形式に慣れたら、英語のみの問題集も活用してみてください。

IELTS 16 Academic Student's Book with Answers with Audio with Resource Bank

5, 英語教員向け制度を活用する

※以下の制度は英語教員のみ利用可能です。

IELTSを指導する教育関係者向けに開発された「ティーチャー・トレーニング・プログラム」(無料)では、生徒を指導する上で重要なスピーキングとライティングの評価基準のポイントを学ぶことができます。

また、IELTSを受験する際、5,500円の助成金がもらえる英語担当教員向けの受験料助成制度もあります。

オーバーオールスコア別:指導のポイント

IELTSは4技能(リーディング、リスニング、ライティング、スピーキング)ごとに1.0~9.0の0.5刻みでスコアが出ます。

各技能の個別スコアは「バンドスコア」、各バンドスコアの平均点で計算される総合スコアは「オーバーオールスコア」と呼ばれます。

バンドスコアの平均の小数点以下が「.75」や「.25」だった場合、1つ上のスコアがもらえます。たとえば、4技能のバンドスコアの平均が5.75だった場合、オーバーオールスコアは繰り上げで6.0になる、ということです。

ここからは目標のオーバーオールスコアごとに、指導上の注意点を解説していきます。

オーバーオールスコア5.0~5.5を目指す場合

目標のオーバーオールスコアと同点のバンドスコアが取れる英語力をつけましょう。結果、本番でどこか2技能のバンドスコアが目標より0.5低くなったとしても、オーバーオールスコア(平均点)で目標スコアを取ることができます。

オーバーオール

リスニング

リーディング

ライティング

スピーキング

5.5

5.5

5.5

5.0

5.0

【ポイント】生徒の英語力に合わせて指導する

一般的に、スピーキングでは同じ単語の繰り返しを避けた方がよいとされていますし、ライティングでは無生物を主語にした文が評価されます。しかし、このレベルの生徒に上記を要求するのはハードルが高いです。

英語力が高くない生徒の場合は、多少同じ表現の繰り返しはあっても、簡単な英語を使って正しく話すことを優先して対策を進めるほうが無難です。

また、無理して無生物を主語にするよりは、”people”や”students”など「人」を主語にするほうが、正しい文章を作りやすくなります。

オーバーオールスコア6.0~6.5を目指す場合

日本語で教育を受けた人にとって、ライティングとスピーキングで6.5を取ることは、かなり難しいです。

よって、ライティングとスピーキングは5.5~6.0あたりで十分として、リーディングとリスニングで平均点を上げる戦略のほうが、目標のオーバーオールスコアに到達しやすくなります。

オーバーオール

リスニング

リーディング

ライティング

スピーキング

6.5

6.5

6.5

6.0

6.0

オーバーオールスコア7.0~7.5を目指す場合

高校生で7.5を目指す人はあまりいないと思いますが、7.0を持っていると国内の大学入試でも優遇されるケースはあります。やはりライティングとスピーキングでハイスコアを取ることは難しいので、今まで以上にリーディングとリスニングで平均点を引っ張るようにしておく必要があります。

オーバーオール

リスニング

リーディング

ライティング

スピーキング

7.5

7.5

8.5

6.5

6.5

リーディング:具体的な指導方法

リーディングの問題形式とサンプル問題はこちら

【ポイント】問題を解く手順を教える

リーディングテストでは、タイトル→設問→本文の順番で目を通します。基本的に本文の読み飛ばしはせずに、意味をしっかりと把握しながら最初から最後まで読むようにします。

40問中、約10問は「True / False / Not Given問題」が出題されます。この問題形式では、設問の内容が本文と一致するか、矛盾するか、判断できないかを答えます。慣れていないと混乱しやすいので、練習をしておいてください。

また、本文の単語を使って答える「抜き出し問題」も約10問出題されます。この2つの形式の正答率を高められると、リーディングのスコアが安定します。

正解した得点をバンドスコアに換算する目安は以下です。

リーディング(アカデミック)

バンドスコア5=40点満点中15点

バンドスコア6=40点満点中23点

バンドスコア7=40点満点中30点

バンドスコア8=40点満点中35点

【ポイント】持っている単語帳を活用する

ボキャブラリー対策としては、高校生が使う単語帳(システム英単語、ターゲット 1900など)を覚え切ることを最低ラインとしてください。その上で IELTS 用の単語帳などを使って語彙を増やしていくのがよいと思います。

▶おすすめリーディング教材サイト

The Guardian

National Geographic

リスニング:具体的な指導方法

リスニングの問題形式とサンプル問題はこちら

リスニングテストでは「書き取り問題」と「選択問題」が約半々で出題されます。IELTSをよく知らない方は、選択肢が与えられている「選択問題」のほうが簡単と思いがちですが、実は「書き取り問題」のほうが間違いなく簡単です。

「書き取り問題」は、解答部分を聞き取れさえすれば解答できます。一方IELTSの「選択問題」は結構いじわるで、すべての選択肢の内容について本文で言及します。音声の内容をしっかりと理解していないと正解できない作りになっています。

【ポイント】問題を解くコツを教える

IELTSのリスニングテストは1問1答ではなく、長い音声を聞きながら、次から次へと問題に答えていきます。以下に問題を解く際の基本的なコツを挙げました。

・音声が流れる前に、設問に目を通しておく

※ペーパー版、コンピューター版ともに設問を先読みできます。

・「書き取り問題」は空欄の前後をチェックしてどのような答えになるか予想をしておく

・「選択問題」は設問、選択肢の両方をできるだけ読んで内容を理解しておく

・本文が流れているときは遅れないように注意しつつ、わからない場合は切り替えて次の問題へと進む

正解した得点をバンドスコアに換算する目安は以下です。

リスニング

バンドスコア5=40点満点中16点

バンドスコア6=40点満点中23点

バンドスコア7=40点満点中30点

バンドスコア8=40点満点中35点

【ポイント】IELTSの問題集を使って耳を鍛える

リスニング力アップに繋がるトレーニング方法を3つご紹介します。

・ディクテーション

30~60秒の音源を10回ほど繰り返し流し、すべての単語を書き取るようにします。最後にスクリプト(台本)を見て答え合わせをします。

・意味取り練習

1文ごとに音源を一時停止して、意味を考えます。正しく意味を理解できていたら、次の文に進みます。

・シャドーイング(オーバーラッピング)

1分ほどの音声を使い3段階に分けて行います。まずはスクリプトを見ずに、音をまねするつもりで3回発声します。続いて、スクリプトを見ながら意味を込めて3回発声します。最後に再度スクリプトを見ず、意味を込めながら3回発声します。

おすすめリスニング教材サイト

BBC 6 Minute English

ライティング:具体的な指導方法

ライティングの問題形式とサンプル問題はこちら!

ライティングの採点基準はこちら!

【ポイント】設問で求められている内容に注意する

ライティングでは、書き始める前の「設問の理解」「アイデア出し」「立場・構成決め」が重要になります。とくにタスク2では、書くべきことが曖昧なままだと、途中で話が脱線しやすくなります。

練習で答案を作ったら自分で検証してください。設問で求められていることと自分のエッセイの内容にずれがないか、1日置いてから客観的に見直すこともおすすめです。

【ポイント】サンプルエッセイ(解答例)を活用する

IELTSライティングテストに適した表現や構成は、信頼できるサンプル(解答例)を参考にするとよいです。ぜひ公認問題集をご活用ください。

「IDP Education IELTS 公認問題集」詳しくはこちら

【ポイント】添削は”Grammarly”を活用する

ライティング対策で一番大変なことは、英作文の添削ではないでしょうか。そこでおすすめのツールが”Grammarly”です。

パソコン用の無料版を使い、赤線が出たところを直すようにします。スペルミス、単数・複数や冠詞のミスを拾ってもらえます。

指導者の方にはとても便利で、添削の精度が上がります。生徒が自分で使う場合は、自分で添削してミスを直してからオリジナル版をGrammarlyに入れて、自分の添削と比較するとよいと思います。

スピーキング:具体的な指導方法

スピーキングの問題形式とサンプル問題はこちら!

スピーキングの採点基準はこちら!

【ポイント】自分の声を録音して聞く

話す練習として一番おすすめなのは、参考書の質問を元に解答した自分の声を録音して、聞く方法です。なるべく空白を作らずに喋り続けることを意識してみてください。

参考書を使わない場合は、自分の過去の出来事を1~2分で話すトレーニング方法もおすすめです。

自分の声の録音を聞き返すときは、話の内容よりも、きちんとした英語になっているかを確認しましょう。

まとめ

なるべくコストを抑えてIELTS対策をする5つの方法について、今一度おさらいしてみましょう。

  1. 公式模擬試験を活用する

  2. 無料オンラインセミナーに参加する

  3. 塾などの無料体験レッスンを活用する

  4. 問題集や参考書で実力を上げる

  5. 英語教員向け制度を活用する

「IELTS対策の指導をする上で一番難しいのは、生徒のモチベーションを保つこと」だと小玉先生はおっしゃいました。試験対策は大変だと思いますが、さまざまな教材を使って楽しく英語を学ぶことも大切ですね。皆さんのIELTS対策を応援しています!